南へ向かう

第6日目、早朝ホテル前から大きなバスに乗車し、アラスカの中心地アンカレッジへ向かう。バスは小さなモニターでアンカレッジ動物園の二頭の子クマのドキュメンタリービデオを流していた。ぼ〜と昨日のクマたちを思い出しつつを見ていると、雨が降り始め、バスは水しぶきをあげて走行していた。
 周囲の山は上の方が雲に隠れている。もしかしたら、昨日行ったデナリ公園の高地は雪が降っているかもしれない。1日で全く風景が変わってしまうのがこの時期の天候。1日遅く来ていたら、あの秋色の風景は見れなかったかもしれない。
 
雨の中、アンカレッジ空港へ到着。
今日はここから、ERA Aviation という国内線の飛行機で30分、キーナイ(KENAI)という町へ移動する。以前札幌で知り合った方の所で3泊する予定。 空港では、なんとボディーチェックも受けずに、空港ビルから歩いて直接、飛行機に乗り込む。この歩いて飛行機のタラップから乗り込む動作がとても好きなのだ。なんとも旅心をくすぐる。
 
DASH8というプロペラ機だが定期便なので30席ほどの本革シート仕様。地元のおばちゃん、これからフィッシングに行くおじさんたちと乗り合わせ、雨のアンカレッジ空港を飛び立つ。10分位で、灰色の雲の合間から森と湖沼群が見えてきた。太陽も顔を出し、グレーの雲が白い雲に変わった。人工物は全くなく森と湖しか見えない。

ここのエリアは国定公園になっているが、道路がない事もあって訪れる人が少なく、ガイドブックにも載っていない。交通手段は水上飛行機しかないのだろうが、静かな小さい湖のほとりでテントを張って、ムースの親子ををゆっくり見てみたいと思った。
飛行機は、着陸態勢へと入り、太陽の光が眩しい小さな空港へとランディングした。

スプルスに囲まれた街

アラスカ州キナイ市、天気は快晴。午前中キナイの市街地に出かける。ここは人口7000人位の小さな街。特に観光地になっている訳ではないので、とても静かな街だ。街はスプルスの森の中に家が点在しているな感じで森林浴をしているかのように空気がさわやか。スプルスの木は青空に向かってスッと伸びてとても気持ちがいい。

ちょっと家の前で撮らせていただく。知人のお宅の車庫(ガレージ)です。ガレージの入り口に飾られているのはカリブーとムースの角。街のお店ではムースの肉が普通に売られているし、家の庭にある家庭菜園はムース除けに金網で囲う。狩りをしなくても近くの原野に行けば幾らでも角は見つけられる。ムースやカリブーなど動物たちとの関わりは、地元の人にとって普通の生活なんだと改めて感じた。 

海の香り

 午後はキーナイからスターリング・ハイウェイを南に下りホーマーに出かける。アラスカの理想郷とうたわれるほどの温暖な気候と緑豊かな美しい漁村である。ガソリンスタンドで給油中に横のコンビニでお昼を買う。 当然、おにぎりなんて売っていない。ランチパックを買ってみる。中身は、チキンハンバーガー、コカコーラ、ポテトチップ、チョコバー、何だかおやつみたいだけどランチである。アメリカンスタイルというものらしい。旅行中はハンバーガーばかり。米が食べたいと思う自分はやはり日本人だと思う。

 キーナイ半島の先端は,ホーマースピット(砂州)だ。ここには、「ランズ・エンド・リゾート」という有名なホテルが建っている。その名は、「地の果て」、そういえば、知床のウトロ側にも同じ名前のホテルがある。雰囲気は全然違ってこちらはすごく開放的で明るい。こんなところで一泊、ゆっくり夕日を眺めたいな。夕食はもちろんサーモンステーキ!
 そんな想像をしたホテル前の浜でプカプカ浮いているラッコとカモメを発見。背泳ぎでお腹をだしてカニを食べてる。あっ潜った! (数十秒後)浮いてきた、あ、また食べてる! 
 浜辺を歩いているとトウヒの倒木が打ち上げられていた。星野道夫著「旅をする木」そのものだ。内陸のある場所で育ち,やがて流れて出て,ここにたどり着いた樹。どのくらい時間を過ごしただろうか。アラスカでは人間の時計ではなく自然の時計が動いている気がした。

旅をする木
海岸にはどこかから流れ着いたトウヒの流木があった。成長が遅いアラスカでこの大きさになるには百年以上はゆうにかかる。
この木の歴史、旅はいつからなのだろう。
潮の香り、心地よく駆け抜ける風、形を変え空を飾る雲、アラスカの海は明るかった。